内容としては、小学校で行われている道徳の内容に疑問を持ち、個々の価値や哲学、時代に合わせた考え方に変えるように提案している本でした。内容は平易で2時間程度で読めるかと思います。10万部程売れているみたいですね。
ちょっと気になったのは、本人が書いたのだろうか?高度な言い回しが多数ありました。以前の彼の本を読めば分かりますが、書き方はとても平易に口語体で書かれた著作が圧倒的に多いので、もし、本人が書いたとしたら、人生観が変わってしまったのかな?と心配になりました。
また、道徳に対して新しい提案がありましたが、提案内容が曖昧だったので、もう少し、新たな道筋や背景を示してあげると、より共鳴・共感出来るのではないだろうか。
そもそも、道徳の定義は、拠り所やルール、行動規範・国民のアイデンティティーのことだと思います。本来、宗教が伝えていくのですが、日本は無宗教状態です。日本には神教、仏教がありますが、敗戦の結果、排除されてしまいましたし、戦時中も国威高揚に利用された苦い経験がある為、無宗教状態になってしまいました。フランスなどはキリスト教があり、日曜日に教会へ行くので、自然と道徳教育が出来ています。
拠り所でいえば、地域や会社、学校、友達等が挙げられますが、少子高齢化、終身雇用の崩壊、SNSの発達により、生身の拠り所は消滅寸前になっているのが現実です。日本人としてのバックボーンを育成する場所がないのに、道徳自体を完全否定し、個々に考えを求めるのは、暴論だなと感じました。先程、例に挙げたフランスはキリスト教がバックボーンにあり、かつ個々の生き方に関しては自由を尊重し、謳歌しています。まさに著者が言いたかった、お手本がフランスにありますが、バックボーンあっての個性だということを著者には理解をしてもらいたい。
また、フランスの国旗は自由・平等・友愛を意味しており、国民のアイデンティティーに深く刻まれている。アメリカ建国にもフランスは深く関わっており、アメリカの自由の精神にはフランスのアイデンティティーが刻まれている。
長い時代、血を流すような色んな背景があって自由や個の尊重が生まれると考えると、日本も時間がかかるのではないだろうか。
今、日本人の拠り所はfacebook,、LINE、メールなのかも知れません。人と繋がれるし、新しい形のコミュニティーなのかも知れません。本来、宗教や道徳で行うことをSNSが補ってくれているのだと思います。著者は恐らく、SNSを知らないので、その辺りの背景にも不勉強なんだなと感じてしまいました。
提案としてはとても良いのですが。