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兵站が伸びすぎた

ライザップの中間決算が発表された。黒字予想から、一転、大幅な赤字、通期でも赤字予想とのことだった。株式市場やステークホルダーや一般の人には青天の霹靂だったかもしれないが、彼らの決算資料を読んでいた人からすると、『やっぱり』という声が多いのではないでしょうか?
2018年3月決算資料を見ると良く分かる。営業利益は136億円だが、キャッシュフローはわずか8,800万円である。つまり、お金が入ってこないのである。利益があっても、現金が無い状態なのだ。M&Aをする為には、資金が必要の為、金融機関から年270億円程度調達している。
現金が入ってこない間も経営が可能なのは、金融機関から資金を調達しているからだと推測される。

なぜ?そんな危ない橋を渡ろうとしていたのだろうか?恐らく、ライザップで課したイケイケドンドンな売上目標を遂行するために、キャッシュフローよりも帳簿上の利益、トップライン(売上高)の拡大を社長自ら推進していたのだろう。
通常の会社であれば、黒字倒産してしまうだろう。優秀な財務担当がいるからこそ、出来る手法だと思う。

今回、問題視されていたのは、『負ののれん』だ。『負ののれん』とは帳簿上の純資産と売却時の純資産の差額を決済時に計上する。

ライザップのM&Aは簿価よりも安く購入しているので、購入益が発生することになる。その利益が営業利益の6割程度を占めていたそうだ。赤字企業の赤字額を、買収益で相殺していたことになる。カルビーCEOから就任した松本さんに『負ののれん』の活用の中止と、赤字企業の膿だしとコア事業(ライザップ)と関係のない事業の整理整頓をするように、瀬戸社長に迫ったというのが今回の大幅赤字の背景にあるようだ。2019年3月期の営業利益には、『負ののれん』を織り込み済みだったらしく、麻薬のごとく抜けられなくなってしまったようだ。(問題として、M&Aをしていない時点で、『負ののれん』を予測し、利益に織り込んでいるのはさずがにびっくりした。)

建売会社やボーリング、CD販売、介護事業等、ライザップの事業とは親和性が低い事業が数多くある、『シティリビング』や『ぱど』のような紙媒体を用いた斜陽産業事業も含まれており、再建力に定評があるライザップでも、一度、整理整頓するのは当然の帰結と言える。

子会社も投資事業の不調等で多額の赤字を出しており、ガバナンスが効いていないようだ。未上場を含めると数年で75社のM&Aを行っているので仕方ない部分はあるが、王道経営で有名なJ&Jの元日本法人社長の松本さんからすると、咎めない訳にはいかなかったのだろう。

今思うと、71歳の松本さんを40歳の瀬戸社長が招聘したのは、伸び過ぎた兵站の整理をしたかったのではないだろうか?瀬戸社長よりも年上且つ海千山千の経営陣や子会社社長に今回の英断を飲ませるには、老獪且つ経験豊かなプロ経営者に頼む他方法が無かったのではないだろうか。

瀬戸社長と私は歳が近いので、そんな苦悩があったのではと推測する。若く能力がある経営者だと思うので、これをバネに飛躍して欲しいと切に願う。


LIXIL

プロ経営者は厳しいようだ。LIXIL瀬戸社長が実質の更迭を受けた。創業家の意向が強いようだ。2代続けて、短期間の更迭だ。プロ経営者はプロ野球監督と同じだと、私の恩師は語っていたが、まさしくその通りだ。

中小企業経営者は、プロ経営者よりも苛烈かもしれません。高額な給与の保証もなければ、自分の財産も実質、金融機関に差し出して経営をしないとダメだから。金融機関や従業員から厳しい目が向けられる為、経営者としての生きがいが無い人にはとても苛烈な環境だと思う。利益が出ていれば何も言われないのだが、長い経営を通して、ずっと順調というのはあり得ないので、誰しも厳しい時代を経験しないといけないのだ。起業のハードルや調達のハードルが下がったが、大変さは変わっていない。むしろ、ハードルが下がった分、厳しさの落差に落胆してしまうのではないか。

今、25万人程度の70歳を迎えた社長が後継者不足で廃業を検討しているという。雇用が600万人失われ、GDPも20兆円前後だったと思うが、日本経済に影響が出ると言う。しかも、大半が利益が出ている会社だというのが驚きだ。

70歳社長の子息の大半は一流大学を出て、現在40歳過ぎ、上場企業の管理職にいるケースが多いという。給与もそれなり、仕事内容もそれなりの責任、規模があり、今更、全てのリスクを背負って、継ぐことは出来ないというのが多いらしい。

政府も事業承継をしやすいように仕組みを変えているようだが、経営者になると言うハードルが高い為、難しいだろう。
私も現在まで前職で働き続けていた場合には、かなりの給与水準だったので、辞められなかっただろう。

継がせる為には幼き頃より、働く意義や、雇用を支える意義、経営者として生きる教育を行なう必要があったのかも知れない。

LIXILの様に、中小企業にもプロ経営者が派遣される時代が近いと思う。(リクルートが実際に行っている)


大人

最近、忙しさと疲れからか、硬派な本が受け付けず、小説を読んでいます。同年代の平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』を偶然、書店で手に取りました。来年、福山雅治さんと石田ゆり子さんで映画化されるということで、まだ読了したこともないということもあり、買ってみることにしました。

純文学の様に流れる様な文章のうまさ、語彙力の高さには、さすが芥川賞作家&京大卒だなと脱帽しました。明治、大正、昭和初期の文豪が使うような語句や言い回しを多用されており、作家としての基礎力の高さに唸ってしまいました。

40代男女が織りなす恋愛小説ですが、クライマックスへのアプローチは賛否両論あるのではないだろうか?真っ当な恋愛を重ねた大人が読んでいると仮定すると、結婚を決めた男女が高校生や大学生程度のいざこざレベルで数年間離れ離れになってしまうだろうか?その場面を読んだ瞬間から私にはこの本が受け付けられなかった・・・・。おそらく、読者を良い意味で欺くためには、効果的だったとも言える。ただ、40過ぎたおじさまには、そんな奇をてらった仕掛けは不要だったな。とても良い本なのですが、恋愛小説という点で見ると官能的でもなく、叙情的でも無かったのが残念。ライトな現代を反映した小説だと思う。


戦略

とある勉強会の事務局&講師をさせて頂いております。財務講座を開いたところ、好評の為、補講をすることに相成りました。財務が大事だと言いつつも、実はウエイト的には、大して重要ではなく、利益あっての財務ですので、本来は営業戦略や経営戦略の方がとても大事です。
そんな告知も補講で行おうかと思案し、資料を探しておりましたところ、うってつけの本を見つけました。『MBA入門2』(日経BP)がとても平易で分り易く、経営者に必要な経営戦略が丁寧に説明されています。

更には、ビジネスマンに大人気だった、三枝匡さんの事業再生小説『経営パワーの危機』、『戦略プロフェッショナル』、『V字回復の経営』もストーリー仕立てで読めるので、選択と集中を学ぶのにはうってつけだと思う。(弊社社員に読ませたが、難しかったそうです・・。)

戦略の大家といえば、一橋大学名誉教授、野中郁次郎先生が有名(小池知事ご推薦の書『失敗の本質』で有名)ですが、その方の最新作の『構想力の方法論』(日経BP 紺野登共著)がおすすめだが、内容が高度な為、事前に知識が必要だと感じた。実はまだ読了が出来ていない・・・。

83歳の野中先生が、最新のイノベーション戦略を執筆されているのは、とても素晴らしい。補講までに読了して紹介をしたいと思います。


即物的

『テルマエ・ロマエ』で有名な漫画家ヤマザキマリさんの新書『仕事にしばらなれない生き方』(小学館新書)を拝読した。17歳から油絵を習いにフィレンツェに極貧留学し、29歳に日本に帰国したそうです。帰国した後も43歳で『テルマエ・ロマエ』が当たるまでは、とても苦労されていたそうです。七転八倒しながら、生きるとは何か、価値とは何かをヤマザキマリとして読者に問いかけます。苦労に苦労を重ねた人だけに、言葉に重みがあり、教養も相当ある方ですので、人間の真理を上手く表現されていると思います。暴君ネロの話もとても分かりやすかった。

日本のバブル期に留学をし、日本語が分かるスタッフとしてブランドショップでアルバイトをしたこともあり、お金に全ての価値観を置く、日本人の在り方に疑問を持っていました。

幼少期を日本で過ごした時も、29歳で日本に帰国した際にも、宗教の様にお金に信仰をしている日本人の在り方に疑問を呈しています。それはかつてフィレンツェが金融都市として発展し、メディチ家が崩壊するまで栄華を極め没落していったという歴史を知っていたからに他なりません。また、イタリアでは生活に困窮しながらも、文学や芸術に邁進する人々が多く存在し、その方々から多くの教養や叡智をもらったという体験もあり、本当の生きる価値とは何か?お金だけが人生なのか?疑問を投げかけています。

今の若者は即物的ではなくなり、モノから事へ価値基準が変化したのだが、結局は事信仰家にスライドしただけで、自分を満たす道具がお金から事に変化しただけだと思う。

世の中の風潮で嫌なのは『事』を大事にすること自体が素晴らしいこと、それが分からない大人はダメだという雰囲気を感じる。反論したくても、多様性や若さという言葉で打ち消されてしまう。

事を大事にすることは多様性がある様に一見見えるが、僕から見れば単なる島国特有の均質化にしか過ぎない。例えで言うなら、ハロウィンやインスタ映えがそうだ。ルイヴィトンのバックから、いいねの数の称賛に変わっただけで、自分を満たしたいという気持ちは今の若者の方がエスカレートしていると僕個人は感じる。

戦争も知らない、困窮したことが無い、どうしようもない不条理を味わったことが無い若者が増える中、声高に社会変革だ、今の世の中の在り方はどうなんだと言う若者には、僕はどうも理解が出来ない。ヤマザキマリさんの様にプリンシプルを貫いた人が言うなら別なのだが・・・。平和とは良いことだが、理想論ばかり言う人が増えると言う矛盾をはらんでいると思う。しかも歴史的な知識がないのも残念だ。

文化的に成熟をするとは何か?僕は他人を価値基準に置かず、自分を生きることだと思う。勇気がとても必要だが、今の日本人に足りない部分なのかも知れない。

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